ネット上の女叩きにもリアルでのフェミサイドにも参加せず、怒りを自分自身に向けただ自分自身を呪う「サイレント・インセル」が急増

女性蔑視なキラーインセルよりはるかに多い「見えないインセル」の特徴とは？（クーリエ・ジャポン）
https://news.yahoo.co.jp/articles/b97c81f8b7eb86b07867a5ac3d6c847dbd5075a1

インセル（不本意な禁欲主義者）というと、たとえば、2014年に6人の女性を無差別に殺害した当時22歳の男性のような「キラーインセル」が想起されることが多いが、すべてのインセルがそうであるわけではないと、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が報じている。

同紙はインセルを大きく2つに区別し、キラーインセルよりも増えているのが「インビジブル（見えない）インセル」だと述べている。

キラーインセルたちは、性的に周縁化されていると自認し、その怒りの矛先を女性に向け、女性蔑視な発言をするなどして、女性を攻撃するオンラインコミュニティに属する傾向がある。

一方、見えないインセルたちは、そのようなコミュニティに参加していない傾向がある。つまり、文字通り「インビジブル（見えない）」な存在で、この「見えない」グループの方が「はるかに大きい」。

キラーインセルは「数万人」と比較的小規模であるのに対し、後者の見えないインセルは「何千万人」と、米・犯罪学者で『インセルの反乱』の著者でもあるリサ・スギウラは見積もる。そして、その人口比率ゆえに、本当の「典型的なインセル」とはキラーインセルではなく、見えないインセルたちだと主張する。

見えないインセルは「自分たちの性的劣等性を変えられないものとして受け入れ」、「自身の恵まれない容姿を理由に女性と恋愛関係を築くことに難しさを覚えている」点ではキラーインセルに似ている。

だが、キラーインセルが暴力行為と関連しているのに対し、彼らは必ずしも女性蔑視的な考えには染まっておらず、また怒りの矛先も女性ではなく、自分自身に向ける可能性があるようだ。

実際、インセルを調査した「incel.coフォーラム」の報告では、回答者の68%が「長期にわたるうつ病」を経験しているという。よって、見えないインセルたちの「モテないこと」に対する反応は、「殺人ではなく、精神的苦痛」だと同紙は書いている。

「彼らは、あなたの周りの無害な隣人や同僚かもしれず、その数は増殖している」

その証左として、同紙は2019年にシカゴ大学が実施した一般社会調査の報告を引用している。それによれば、米国では1年間女性とセクロスをしていない異性愛者の男性の若者は28％で、10年前の約10％から増加している。前述のスギウラは著書のなかでこう指摘している。

状況を悪化させている要因のひとつは、「多くのインセルが、自閉症スペクトラムにあると考えられている」こと。

「インセルコミュニティ全体が暴力と憎しみに集中していると考えるのは不公平だといえる。なぜなら、そのほとんどが自己嫌悪に集中しているのだから」

同紙は、この現実が認識されていないことに警鐘を鳴らすとともに、インセルの根本原因とそれに伴うフラストレーションに対処することの重要性を強調している。