お前ら持病なにもってる？　僕は悪性関節リウマチ

https://digital.asahi.com/articles/ASP98269WP8TPTIL02J.html

「ラストフライト」は機内結婚式　ANA機、コロナ禍で早めの引退

コロナ禍で大幅な減便を余儀なくされている航空業界。飛ばない飛行機を有効活用しようと、全日空（ANA）は、羽田空港に駐機する機内で7組の結婚式を行った。国際線仕様の2機は、これが退役前の「ラストフライト」となった。
ANAの社内で昨夏、費用をかけずに、もうけるアイデアを募る「あきんど魂コンテスト」があった。必要なのは収益性と、短期間で話題となって注目される「バズる」こと。グループ会社の社員も含め、約1600件の応募があった。
国際線の運賃を担当する芳賀一樹さん（33）も応募した。企画案は「機内結婚式」。コロナ禍で結婚式を挙げられなかったカップルがたくさんいるとニュースで知り、飛ばせない「余剰機材」とコラボできないか考えた。
「稼げる」アイデアその価格は
収益性は、結婚式会社の協力で客にアンケートをしたり、妻や友人にも聞いたりして調べ、「稼げる」と判断した。「機内結婚式ならSNSなどで、ANAが厳しい状況下でもがんばっているんだ、ということが伝えられる」と確信した。
今年3月、企画が採用された。価格は155万5千円、招待客は30人を上限に設定し、4月15日に募集すると、全国から100件以上の問い合わせがあった。実際に17組が申し込み、うち7組が選ばれた。
しかし、国内の感染拡大は止まらず、まもなく3回目の緊急事態宣言が東京や大阪などに出されることになった。プロジェクトチーム側は、緊急事態宣言が出された場合は、式の延期か中止を考えていた。
井上慎一専務と平子裕志社長に報告した。2人からは「式の延期を経験されたお客様もいらっしゃる。やっとできると思っていたのに、できないのはつらい」「感染症対策は徹底している。より徹底してやった方がいいのでは」と励まされたという。機内結婚式は「社会貢献でもある」との思いもあり、最終的に実施を決めた。
「もっと飛ぶ予定でしたが…」
使ったのは2機の国際線仕様のボーイング777―300ERだ。2007年と08年に導入され、ニューヨークやロンドン、フランクフルトなどとの間を飛んでいたが、コロナ禍で早めの退役が決まっていた。
式の当日、運営に関わった社員は地上職やグランドハンドリング職などを含め、7組それぞれに約100人。2機は機内結婚式という「ラストフライト」を終えた。通常ならあと6、7年は客を乗せて飛べたのに、売却され、7月中旬までに米国へ飛び立った。
芳賀さんは「式の立会人をしたパイロットの方は『とてもいい機材でもっともっと飛んでいく予定でしたが……』と言っていました。整備の方も日々メンテナンスをして愛着もあったと思います。早期退役はとても残念だけど、お客様を乗せて飛ぶ以外でも、交わる機会をつくれたことで機体も喜んだと思います」と振り返った
エントリーシートに思い込め
「みつひろさん、えりこさん、ご両家の皆様、ご結婚おめでとうございます。今日もANAをご利用いただきまして誠にありがとうございます。この飛行機は、ハッピーアイランド行き604便でございます」
6月4日、羽田空港に駐機した機内で、結婚式を挙げた静岡県富士市の中村光宏さん（37）と恵理子さん（39）へ、客室乗務員からアナウンスが流れた。
2人は2019年11月に結婚したが式は挙げず、翌年1月の新婚旅行先のハワイで、写真だけを撮った。両親にも花嫁姿を見せたいと思っていた今年4月、光宏さんが機内結婚式の募集を見つけた。
飛行機好きだった恵理子さんはすぐにエントリーシートを書いた。結婚前、恵理子さんは兵庫県姫路市の病院内で薬剤師をしていた。光宏さんと会うために東京へ向かったのも、新婚旅行のハワイもANA便。ご縁があることを書き込んだ。
スタッフらが介助
緊急事態宣言下での式には迷いもあった。友人からは結婚式が延期になった話を聞いていたし、医療従事者の苦労もわかる。でも、機内の空気は約3分ですべて換気され、参列者も限られている。「この機会しかできない」と決断した。
参列者はお互いの両親と夫の姉夫婦だけにした。姫路市から参列した恵理子さんの父は持病のため、長い距離の歩行が難しかった。でも、手伝いが必要な客の案内に慣れたスタッフらが、車いすを押すなど最大限の介助をしてくれたという。
当日はあいにくの雨で、機外で飛行機との撮影はできなかった。でも恵理子さんは「自分がやりたい形の式を挙げることができ、父にも手厚い配慮をしてくださったスタッフの方には心から感謝しています」。