【流行語】教授「リテラシーという言葉が嫌い、オールドメディアを疑ったり、陰謀論にはまったりする」（ヽ゜ん゜）「ニューメディア！」

オールドメディアは、直接的には新聞、テレビなど既存マスコミを指す。

「言葉自体はインターネットなどのニューメディアに対するものとして、20年以上前から使われている。ただ、検索数を調べたら、兵庫県知事選があった2024年11月の後半から増えており、それまで人々の関心はほとんどなかった。検索ワードも『オールドメディアとは』『オールドメディア　意味』が多い」（藤代氏、以下同）

兵庫県知事選では、告示後にマスコミからの情報発信が減り、SNSの情報が検証なしで独り歩きした。その反省は今年、テレビ各局の社長会見でも語られ、今夏の参院選では、「量的公平」から「質的公平」へ選挙報道の転換を図る姿勢が目立つようになった。ただ、ここで注目すべきはメディアで語られた反省だ。

「兵庫県知事選の論評でテレビや新聞の一部が自らにオールドメディアというレッテルを貼った。それを検索した人が、既存メディアを『マスゴミ』と呼び、切り取り報道だなどと批判するネガティブな意見を見つけた。流行語になったのはメディアが自分で作った自虐的な現象ではないか」

だが、藤代氏はオールドメディア批判は意味を持つという。

「オールドメディアをたたいても、では代わりに誰がそれを担うのか。このままいくと、ないということもわかる。もしニューメディアというものがあるとして、その人たちが継続的な取材や災害報道をできるのか。米国では約20年前に政治報道の『ポリティコ』などのネットメディアができて盛り上がったが、日本では見る影もない」

大学教授としてメディア社会学科の学生と接している藤代氏は、「学生たちはネットでちょっと見た断片的な批判を根拠に、『マスゴミ』はダメだなどと言う」と苦笑する。

藤代氏は、リテラシーという言葉が嫌いだという。メディアリテラシーは、広辞苑で「メディアの伝える情報を批判的に読解・判断・活用する能力」と説明されている。

「リテラシーは自己責任で、それは水が汚いことを前提にしている。でも新聞を見ていれば世の中の出来事はだいたいわかるし、どの新聞もテレビのストレートニュースも、似たものを扱っている。しかし、X（旧ツイッター）などには全然違うことが書いてある。リテラシーが大事だと言えば言うほど、オールドメディアを疑ったり、陰謀論にはまったりする可能性が高まっていく」

オールドメディアに求めるものとして藤代氏は、人々の関心が経済的な価値を持つ「アテンション・エコノミー」に振り回されず、「事実をしっかり報道する役割をもう一度見直す」ことを挙げる。ただ、それでは「もうからないのはわかっている。だから、新しいメディアは育たなかった」とも指摘する。

「新聞やテレビの努力はもちろんだが、取材体制を維持するための仕組みを社会的に構築しなければならない。オールドメディア批判は、その問題を考えるきっかけになると思う」（鵜野光博）

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了）